労働派遣法遵守への取り組み

労働者派遣と請負の関係

請負とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)ですが、労働者派遣との違いは、請負には、注文主と労働者との間に指揮命令関係を生じないという点にあります。

この区分の実際の判断は、必ずしも容易でないことから、この判断を明確に行うことができるように「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)が定められています。

1.労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準

事業主が請負の形式による契約により行う業務の処理に関し次のA、Bのいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。

  • A. 次の(1)から(3)までのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
    • (1)業務の遂行に関する指示その他の管理を請負会社自ら行うものであること。
      • ① 労働者への業務の遂行方法に関する指示その他の管理を行うこと。
        • 仕事の割り付け、順序、緩急の調整等
      • ② 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を行うこと。
        • 業務の遂行に関する技術的な指導、勤怠管理、出来高査定等
    • (2)労働時間等に関する指示その他の管理を請負会社自ら行うものであること。
      • ① 労働者の始業及び終業時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
        • 受託業務の始業及び終業時刻、休憩時間、休日等について、事前に注文主と打ち合わせていること。
        • 業務中は注文主から直接指示を受けることのないよう書面(契約書・仕様書)が作成されていること。また、それに基づいて事業主側の責任者を通じて具体的に指示が行われていること。
        • 業務時間の実績把握を行っていること。
      • ② 労働者の労働時間を延長する場合又は休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
        • 時間外、休日労働は事業主側の責任者が業務の進捗状況等をみて決定していること。
        • 業務量の増減がある場合には、注文主から連絡を受ける体制としていること。
    • (3)企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を請負会社自ら行うものであること。
      • ① 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
        • 事業所への入退場に関する規律の決定、管理を行っていること。
        • 服装、職場秩序の保持、風紀維持のための規律等の決定、管理を行っていること。
      • ② 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。
        • 勤務場所や直接指揮命令する者の決定、変更を行っていること。
  • B. 次の(1)から(3)までのいずれにも該当することにより請負業務を自己の業務として注文主から独立して処理するものであること。
    • (1)業務の処理に要する資金をすべて請負会社自らの責任の下に調達、支払うこと。
    • (2)業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
      • 事業運転資金等はすべて請負会社自らの責任で調達、支払いしていること。
    • (3)次の①又は②のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
      • ① 請負会社の責任と負担で準備し、調達する機械、設備、器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料、資材により、業務を処理すること。
        • 機械、資材等が注文主から借り入れ又は購入されたものについては、別個の双務契約(契約当事者双方に相互に対価的関係をなす法的義務の契約)が必要である。
      • ② 請負会社の行う企画又は請負会社の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。
        • 請負会社が企業体として有する技術、技能等に関するものであり、業務を処理する個々の労働者が有する技術、技能等に関するものではない。

2. その他請負の基準

  • ①発注者から請負事業主に対して、作業工程の見直しや欠陥商品を製作し直すことなど発注に関わる要求や注文を行うことは、請負契約の当事者間で行われるものであり、発注者から請負労働者への直接の指揮命令ではないので労働者派遣には該当せず偽装請負にはあたりません。
  • ②発注者の労働者が、請負事業主の作業場で作業の応援を行い、かつ請負事業主の指揮命令の下、請負業務を行った場合は、発注者が派遣元事業主、請負事業主が派遣先となる労働者派遣に該当します。労働者派遣法に基づき適正に行われていない限りは違法となります。
    なお、請負事業主では大量の注文に応じられないことから、従来の契約の一部解除や変更によって、請負事業主で処理しなくなった業務を発注者が自ら行うこととなった場合等は、変更等の手続が適切になされているのであれば、特に違法ではありません。
  • ③請負事業主の管理責任者が作業者を兼任する場合、管理責任者が休暇等で不在になる場合は、代理の者を選任しておき、管理責任者の代わりに権限を行使できるようにしておけば、特に問題はありません。ただし、事実上は請負労働者の管理等ができないのであれば、管理責任者とはいえず、偽装請負と判断されることになります。
    偽装請負と判断されることは、作業者が1人しかいない場合で当該作業者が管理責任者を兼任している場合、実態的には発注者から管理責任者への注文が、発注者から請負労働者への指揮命令となることです。
  • ④発注者の労働者と請負労働者が混在している場合、それぞれの作業スペースがパーテーション等の物理的に区分されてないことが偽装請負と判断されるものではないが、発注者と請負事業主の作業内容に連続性がある場合は、物理的な区分がされていないことやそれぞれの労働者が混在していることが原因で、発注者が請負労働者に対し、業務の遂行方法に必然的に直接指示を行ってしまう場合は、偽装請負と判断されることになります。
  • ⑤請負労働者の作業服の着用は、発注者が請負労働者に対して直接作業服の指示を行ったり、請負事業主を通じた関与を行ったりすることは、請負事業主が自己の労働者の服務上の規律に関する指示その他の管理を自ら行っていないこととなり、偽装請負と判断されることになります。例えば、事業所内への部外者の侵入を防止し企業機密を守るためや労働者の安全衛生のため等の理由で特定の作業服の着用について、双方合意の上、予め請負契約で定めていること場合は、偽装請負と判断されるものではありません。
  • ⑥発注者による請負労働者への技術指導等を行う場合、一般的に次の①,②の例に該当するものは偽装請負と判断されるものではありません。
    • ①請負事業主による業務処理の開始に先立って、当該設備の貸主としての立場にある発注者が、借り手としての立場にある請負事業主に対して、当該設備の操作方法等について説明を行う際に、請負事業主の監督の下で労働者に当該説明(操作方法等の理解に特に必要となる実習を含みます。)を受けさせる場合
    • ②新製品の製造着手時において、発注者が、請負事業主に対して、請負契約の内容である仕様等について補足的な説明を行う際に、請負事業主の監督の下で労働者に当該説明(資料等を用いて行う説明のみでは十分な仕様等の理解が困難な場合に特に必要となる実習を含みます。)を受けさせる場合。